SONY α700(DSLR-A700) + シグマ 30mm F1.4 EX DC, F1.4, 1/15秒, ISO200, WB:オート, CS:AdobeRGB
7年ぶりのアメリカ。以前に訪れたミネソタとは異なり、街全体が良くも悪くも尖っていた。いろいろなものを見たけれど、すべてが抽象的に渦を巻くひとつの印象に塗りこめられ、いまはそのひとつひとつを取りだすことはできない。それでも、幾つか記憶に残っているものを書いてみよう。肥満で膝を痛め杖をつく人びと。地下鉄のホームでギターを弾きつつ歌っていた少女。若いアーティストが集う街区のカフェテリアでは、男の店員が壜のキャップを手で空け、得意そうに笑っていた。おとなしすぎる犬たち。事故を起こしかけた歩行者と車の運転者が喧嘩をし、大通りの向こうからも人が野次を飛ばし見物する。巨大な鉄の塊でバリケードが組まれたウォールストリート近くの街路。タクシーの運転手はつねに、ヘッドセット越しに歌うように何かを連絡していた。Bellevue Hospital Center。アパートメント屋上のペントハウスから眺めたNYの夜景。ニイハオ、と挨拶をしてきたブロードウェイの呼び込み。
JFKに向かう地下鉄を乗換駅で降りたとき、若い黒人の車掌が身を乗りだし、ぼくにずっと手を振ってくれていた。ぼくも、手を振りかえした。