今朝は起きがけに酷いイメージに襲われて、かなり参った。そういうものには長い年月にわたって襲われ続けてきたので、対処方法は幾つかある。だけれども、それでは手の打ちようのないときもあって、これはほんとうにしんどい。それでも経験上分かっているのは、結局のところは耐えられるということ。最終的には。耐えられない時間はたしかに辛いけれど、必ず終わりは来る。耐えられないことにすら耐えられないようなものが来たとしても、それでも、どのみち終わりは来る。
いま、この時点で、朝のぼくを苦しめたイメージはただの画像になってしまっている。それは(これまでのすべてのそれらがそうであったように)一生記憶に残るけれど、画像となってしまっては、もはや記録としての画像でしかない。
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明るい話をしましょう。明るい話と言って莫迦ばかしい話しかでてこないのが彼の哀れなところですが、何しろ有史以来最高の能天気人間なので、自分のことを哀れと思ったことなど一度もありません。ともかく、先週、ようやく床屋に行ったのです。だいぶモリゾー化していたので、ほとんど強制的に彼女に床屋に連れていかれました。とある駅中にある1,000円床屋。行っておいでと彼女に押し込まれ、お店に入ります。「いらっしゃいませえっ!」「いらっしゃいませええっっ!!」「うおおおおっっっ!!!」と、まるでラーメン屋か何かのようです。もっとも、コミュニケーション能力が負の値を持つ彼のことです。ラーメン屋になど、怖ろしくて入ったことはありませんが。しかしこれはほんとうに床屋なのでしょうか。リーダーのようなひとが何かを言うたびに、その他のスタッフが一斉に同じ言葉を叫びます。潜水艦か。「おまたせしました「おまたせ「おまた」ああああっっっ!!!」」けれどもいざ順番が来て席に着くと、担当のスタッフさんが今度は耳元でそっと、「どのような髪形にいたしましょうか?」と低い声で囁く。よほど私は前世で悪行を積んだのに違いありません。
しかしそれでも髪を切り終えると、脱モリゾーです。頭の軽さに驚きますが、しかしまだまだ、残った重みの93%は頭蓋骨の重みです。血液その他の重みを抜くと、彼の脳みそ自体の重量は負の値の可能性もあると学会では噂されています。軽い頭でふんふん言いながら買い物をして、家に戻ります。その日は注文していた枕が届く日なのでした。もともとどうにも眠りが浅く、枕を変えようと思い立ったのです。しかしテンピュールというのはちょっと値段が高いので、フランスベッド製の低反発枕にしました。荷物が届き、さっそく箱を開けてみます。しかしふと気がつきました。私はさっき1,000円床屋で髪を切ったばかりではないか。行ったことのある方ならお分かりでしょうが、あそこは切り終えた後に洗髪はなく、その代わりに掃除機のような機械でずーずー吸われます。当然、細かな髪の毛は吸いきれません……。あれ、もしかして普通にストレートヘアのひとなら吸いきれるのかな。ぼくはかなりの癖毛だからだめなのかな……。まあいいや、ともかく、まだ切った短い毛が残っています。すたすたと流しに行き、「ああああ!」と叫びながら冷たい水を頭にかけ、髪を洗います。「ああああ!」「おまたせしました「おまたせ「おまた」ああああっっっ!!!」」
フランスベッド製の枕は、なかなか使い心地が良かったです。