それはまるで珈琲のような

こんにちは。きょうはとても疲れているので、とっておきのコーヒーを飲むことにしましょう。ぼくはとにかく何かを描写するのが苦手でして、じゃあ描写以外は得意なのかと言えばもちろんそんなこともありませんが、でも何しろ描写力がない。というわけで、きょうは先日明治屋で購入したコーヒーについて描写してみようと思うのです。その見た目、その味。皆さんの脳裏にまざまざと浮かび上がるかのように描き出す。ま、無理に決まっているのですが、人間、何ごとも鍛錬です。

さて、コーヒーです。”Hawaii Kona 100%”。Cocktail-Do Coffee co., Ltd.と書いてあります。興味のある方は調べてくださいね。グーグルで検索する気力もないのです。瓶詰めのコーヒー。珍しいですね。写真を撮れば良いのでしょうが撮る気力もないのです。えー、ラベルはシンプルです。白地に青くHawaii Konaと書いてある。夏っぽいです。賞味期限は今年の10月05日。けっこう保ちますね。でも早い方が美味しいでしょう。容量は900ml。アイスコーヒーだそうです。わ、冷やしていないや。まあいいでしょう。とりあえず飲んでみます。

おっと、その前にまず見た目を描写しなくてはならぬ。何かほら、「何とかのように黒くてほにゃらら」とか、小説を読むと書いてあるじゃないですか。良く分からないけど。積んである小説をあさればどこかにコーヒーについて描写した箇所があるかもしれませんが、探す気力がないのです。きょうは気力のないクラウドリーフさんです。でも良いのです。自分の力を信じる! じっくりとコーヒーを観察してみましょう。……黒いですね。コーヒーのように黒い。ねえ見て! まるでコーヒーのように黒い! ……もうやめていいですか? いいですか。ありがとう。だいたいコーヒーの見た目を描写して誰が得するというのでしょうか。莫迦らしい。

いやしかし諦めてはいけない。では封を切ってみましょう。ちゃんと封がしてあるところ、なかなかに高級感が漂います。でも容赦なくびりびりと封を切ります。クラウドリーフさんのがさつな性格がうかがえます。切りました。蓋もあけました。ううむ、いかにもコーヒーの香りがしますね。少し甘い感じ。ところで描写ってどうすれば良いんでしょうかね。いまさらですけれど。

では飲んでみましょう。考えてみると、瓶からコーヒーを注ぐのって生まれて初めてですね。コポコポ、良い音がします。でもね、これ、個人的な感覚ですけど、あんまりこういう音を描写するのって品がない気がしてしまう。いや音だけじゃなくて、もうここまでのこと全部かなぐり捨てて言いますけどね、コーヒーなんて飲んでおいしければそれで良くないですか。で、美味しいね、って静かに思って、それで十分じゃないですか。何かね、こうぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ書くと、お前は徳大寺有恒か北方謙三か! という気がしてくる。いやどちらも読んだことがないのだけれど、何となくコーヒーとかにうるさいイメージがある。「男がコーヒーを飲むときは……」とか。ぼくは軟弱なのでそういうのは苦手。ちなみにwikipediaで徳大寺有恒をみると「外国語の日本語表記に独特なセンスを持つことで知られる」と書いてあって、例として「メルツェデス」とある。これはもうメルセデスですね。車なんてまったく知らないぼくでも分る(どっちが正しいとかではないですよ)。「ジャグァー」はジャガーだ。これも分る。父も確か「ジャグァー」と言っていた気がする。三段論法で言えばぼくの父は徳大寺有恒だったことになる。これはもう、論理的に考えてどうしてもそうなる。でもね、「ドゥシヴォ」、ぼくはこれ、絶対「東芝」だと思った。東芝って車作っているんだってびっくりしましたよ。2cvって何のことでしょう。そしてコーヒーの話はどこに行ったのでしょう。

それではいよいよ飲んでみましょう。うっ、苦い。かな? うん、苦い。香りには甘さがあるのに不思議。しかしいつも思うんですけど、相棒と何かを食べたりしたとき、時折「どんなふうに美味しかった?」とか訊かれるんですね。で、これ、ぜんぜん答えようがない。「何か分らないけどおいしかった!」といつも泣きながら答えます。塩を舐めたらしょっぱいし、砂糖を舐めたら甘いですね。それ以上どう言えっていうんだ! と思うのです。みなさん思いませんか? 思いますか。ありがとう。

とりあえず、でも、とても丁寧な味だとは思います。コーヒー好きな人にはお勧め。うん。よし、じゃあちょっとここまでまとめて書いてみましょう。描写。描写。描写。

彼は瓶に入ったコーヒーを見た。それはまるでコーヒーのように黒く、しかし光に透かすと少し茶色かった。「すかす光にすかすと……」彼は部屋の片隅で独り呟くとフヒヒ、と笑いを漏らした。栓を開けると、コーヒーの匂いがした。なぜならそれはコーヒーだったからだ。かすかに甘く、だが口に含むと、あたかもコーヒーのごとく苦かった。「ガムシロップガムシロップ」彼はわたわたと辺りを探った。できればこれはのび太が「メガネメガネ」という感じでやってもらいたいのよね、と彼は思うのであった。

何かハードボイルドしてね!? 俺マジ北方謙三じゃね!? と彼は思うのであった。ちなみに彼の普段の言葉遣いはこのブログにおけるそれとは違い、そうとうに崩れているのであった。

でまあ、突然シリアスになるのですが、自分にとっての表現というもの、最近良く考えるのです。ぼくの文章っていうのはかなりニュートラルだと感じていて、基本的に個性がない。語る内容でかろうじてぼくらしさみたいなものがあるかもしれないなあと思うくらいで、根本的に何かが欠けている。とは言え別段暗い話ではなくて、じゃあどうしたらいいのかな、ということをいろいろ試行錯誤しています。幾つになっても、言葉を書くっていうのは難しいし、完成しないし、でも言葉っていうのはこの「ぼく」自身のかたちでもあるし、だからこうやって悩む、変えていく余地があるっていうのも、やっぱり楽しいことなんですよね。ではまた!

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