愛のためにぼくは戦う!

と言う訳でですね、きょうはあれです、ぼくの愛の深さについて語ろうと思うのです。普段このブログをお読みの方なら、どうせまたバカな話をするのだろうとお思いでしょうが、もちろんそれは正しい。

さて、いまぼくは、とある大学の農学研究科で環境思想を勉強しています。まあその内容に関してはまたいずれ書くとして、ここの大学院には相棒も在籍しているのです。仕事をやめて大学に入りなおしたのは彼女と同時期ですが、ぼくは院に進む前にある理由から一年のブランクがあり、いまは彼女の方が一年先輩です。

でまあ、相棒は調査だ何だと言っては海外に行ってしまう。あとかなり天気の悪いときでも国内の研究林に行ったりする。林とは言え実質山ですから、もう相当に心配です。土砂崩れとか。もともとぼくは病的に心配性なので、これは早死にするよねと思うくらい心配して、結局彼女の近くにいれば安心だよねという結論に達しました。博士課程でここの大学院に転学した理由の一つには、こういったことがあります。研究科は違いますが、大枠は同じですから、ある程度調査に同行したり同じフィールドで研究したりできるだろうと踏んでいる訳です。不純ですね。いやそんなことはない!

ところがここに一つ問題がありまして、ぼくは環境思想なんてやっているにも関わらず、ある種の虫が極めて苦手なのです。はっきり言うと、カタツムリとか、カタツムリから殻を取ったあれ、あれです、やっぱりはっきり書けないので、なあさんと呼びましょう、そのなあさんがダメなのです。どのくらいダメかと言いますと、それを見てしまってから一週間は悪夢にうなされ、食欲がなくなり、些細なことで奇声を発して走り出してしまうくらいダメなのです。会社も休みます。あとひいさんもダメ。血を吸うやつね。なあさんとひいさんに関しては幾らでも奇妙なお話をしてさし上げられるのですが、きょうはそれは割愛。

で、彼女がしばしば登る研究林には、このなあさんとひいさんがたくさんいる。もの凄いたくさんいるらしい。ちょっとですね、この世の話とは思えないほどです。俺騙されているのかな? いやそんなことはないでしょう。どうせこの世界は悪夢です。それは間違いない。

だから彼女にくっついて研究林に行くとか熱帯のジャングルに行くとか、そりゃ言うのは簡単ですし、実際もう博士課程に来ちゃいましたし、後には引けないんですけれど、これは怖い。いまから怖い。想像しただけで失禁しそうです。と言うか、ジャングルに行って帰ってきて、そのぼくがいまのぼくと同じ人格を保有しているという自信がない。恐怖のあまり別の存在に変わってしまうかもしれない。

ただ、無駄なことばかりに頭が働くことで有名なこの私です、たかが数センチの軟体動物になど負けてなどいられない。数十センチのもいるよ、などと言わないで下さい。言わないで下さい!

で、まず考えたのは宇宙服です。ソビエトが崩壊して、恐らくかなりの数の宇宙服が流出したはずです。闇オークションで五百万円も出せば買えるのではないでしょうか。宇宙服さえ着ていれば、あれは完全密閉されていますから、なあさんもひいさんも怖くはない。見ちゃうのは嫌だから、赤外線センサーか何かを取りつけて、外界はそれで認識する。問題は闇オークションなんてものがあるのかどうかぼくは知らないということ、そして知っていても五百万なんてお金はないということ。何しろ昨日お財布を覗いたら、四円しかありませんでしたから。いやスイカがなかったら危なかった。

次に考えたのが、とりあえずジャングルを焼き払うことです。そうすればぼくも安心してジャングルについていける。けれどそれでは彼女の研究対象がなくなってしまうし、そもそもこれ、環境保全を何年も勉強してきた人間の発想ではない。ちょっと落ち着こう。

最後に考えたのが、結局正攻法です。苦手なら、少しずつ慣れていけば良いじゃない。そこでいかにも環境を学んでいる人間っぽく、IUCNのサイトから2004年度版のレッドリスト(2004 IUCN Red List of Threatened Species “A Global species Assessment”)をダウンロードしました。これ面白いので、みなさんもお時間があるときにぜひご覧になると楽しいと思います。

で、ここにはいろいろな絶滅危惧種が写真つきで載っています。とても勉強になります。みんな、いつまでも元気に地球上で暮らして欲しいと思う。それは本当にそう思いますし、そのためにもがんばって研究しないといけない。ぼくはなあさんもひいさんも苦手ですが、しかし嫌いではない。この区別は重要で、だからぼくは、なあさんもひいさんも元気に過ごせるのであれば、それは素晴らしいことだと思います。

しかしですね、51ページをご覧下さい。想像を絶する生き物がいる。殻に毛の生えたカタツムリと、何だか虹色っぽいバーコード模様の入ったなあさん。嘘じゃないって! ぎゃあ、何だこれ! ここは地球ですか!? 風はどうですか!? 探し物は何ですか!?

と、錯乱しながらも、毎日これを少しずつ眺めて身体と心を慣らしていく。最初はpdfの表示倍率を12.5%くらいにして、片目だけ、しかも薄目にして、当該ページを高速スクロールしながら見る。いやこれほとんど見ていないけど。でもって、少しずつ倍率を上げて、スクロールを遅くして、目を開いていく。

長々と書いてきましたが、結論を申し上げます。相棒と同じ大学院に行くと決めてから数ヶ月間、ずっとこれをやってきましたが、いまだに状況は改善しません。今朝、我が家の庭になあさんがいることが判明し、出家を決意しました。相変わらずぼくはなあさんがダメなままです。ああ、ダメなのはぼくの人間性ですか、そうですか。それではみなさん、さようなら。

コメントを残す